今日も深爪

爪を切るのが絶望的に下手です

秘密の鍵を手に入れた僕ら

 今からおよそ10年前、秋田の片田舎の小学校に通っていた私は両親の影響もあり、読書が好きな子だった。当時は教室の本棚にある赤川次郎、そしてよくあるお涙頂戴系の安っぽい感動作品(ごめんなさい)を読み漁っていた記憶がある。

 そんなある日、私は本棚のいちばん上に厚さ3cmほどの本を見つける。タイトルは『宇宙への秘密の鍵』。当時、赤川次郎とお涙頂戴系の(以下略)の他にも、偉人伝を読むことが好きだった私。モーツァルト、ベートーベン、ガリレオライト兄弟ナイチンゲール、…図書館にあった偉人伝(マンガのやつ)は片っ端から読んでいた。ご多分に漏れず、その中にはアインシュタインの伝記もあり、当時の私はひどく感化された。

 というのも、今やこんなにも文系畑出身の、数学は無理です…みたいな人間になってしまったけれど、小学生の頃は無知ながら、無知ゆえに、「宇宙飛行士になりたい!」なんて思っていた時期もあるくらい、宇宙に漠然とした憧れを抱いていたのだ。

 そんなときに突如として目の前に現れた『宇宙への秘密の鍵』、タイトル、厚さ、表紙。当時、あんなにも私の好奇心とプライドを刺激する本に出会ったのは初めてだった。

 ページを無心にめくった。何度も何度も読み返した。
今となっては

ブラックホールから脱出することはできるけれど、それはブラックホールが消滅するときで、何万年、何億年とかかって、出てくる頃には微粒子

みたいな、そんなことが書かれていたな、とぼんやりとしか内容を思い出せないけれど、確かに私の居場所、私の世界を作ってくれたこの本が大好きだった。

 星空を眺めて、「あの星の光は何億年も前の光」と思いを馳せ、勝手にタイムスリップしたような気になれるのも、ネリリしキルルしハララするのも(これは違うけど)、全てを辿るとこの本に行き着く。

 私はホーキング博士の研究や彼の理論については全く分からないけれど、幼い頃の私にとって大事なことを教えてくれたのは事実。

  きっと、私だけではなく、この「秘密の鍵」を手に入れた“私たち”は、これからもずっと、彼のくれた鍵をどこかに抱えて生きていくのだと思う。

 

Rest in peace.